就活の技術#2 ー就活の本質とその対策ー
前回は、就活の心構えに関する記事を書きました。
今回はいよいよ就活とは何か、またどのように対策していくかについて書いていきます。
目次
「就活」とは何か
結論から言うと「就活」とは自らの労働力商品を企業へ売り込む契約交渉だということです。
このことを理解するために前提として2つのことを理解する必要があります。
1つ目は労働力商品とは何かということです。
労働力商品とは単純にいえば能力です。僕たち賃金労働者は企業に自分の能力を時間単位で売ることによって賃金を得ています。例えば教師は教えるという能力によって賃金を得ています。また、人事はヒトを管理するという能力によって賃金を得ています。
2つ目は賃金労働者のお客様(顧客)は常に企業だということです。
僕は小売業に勤めているので最終消費者のお客様(ご来店されるお客様)と接する機会が多々あります。しかし、そこで接する最終消費者のお客様は厳密には僕のお客様ではありません。それは企業のお客様です。僕は最終消費者のお客様から直接賃金を得ているわけではありません。
では、誰が直接僕に賃金を支払っているのでしょうか。それは企業です。
お客様が代金として支払ったものが企業に入り、そこから企業が給料として僕に賃金を支払っているのです。そのため、賃金を与えてくれる方をお客様と考えた場合、僕の真のお客様は企業ということになります。
ちなみに、こうしたことを話すと「では、来店されるお客様はあなたのお客様ではないのでお客様として対応していないのか。」と聞かれることがあります。
もちろん最終消費者のお客様が僕の真のお客様ではないため、ないがしろにして良いということはありません。企業のお客様は最終消費者のお客様であり、企業はそのお客様の効用(満足度)を最大限に高めることを僕たちに要求しています。そのため僕がお客様(企業)のことを最大限に尊重するとき、それは同時に最終消費者のお客様も最大限に尊重することになります。
話を元に戻しますが、就活において就活生は自らの能力を労働力商品として生成し、それを顧客である企業に交渉して売り込むことになります。
就活を労働力商品の契約交渉と捉えるメリット
就活を労働力商品の契約交渉と捉えることで得られるメリットがあります。
- 就活で病むことが少なくなる。
- 契約交渉は対策が可能。
就活をしているとメンタルを病むことが多くあります。
好感触だった企業からお祈りメールを受け取ると何か自分の人生そのものが否定されたような気分になったり、社会から必要とされていないのではないかと思ったりすることがあります。少なくとも就活を始めたばかりの僕はそう感じていました。
でも次のように考えることでそれらの悩みから解放されることになりました。
あなたの目の前にはペットボトルに入った500mLの水が置かれています。これをあなたは売り込む必要があります。あなたは駅へ行ってサラリーマンに500mLの水を200円で販売しようとしました。15人に「水を買いませんか」と声を掛けましたが誰一人買ってくれませんでした。
この場合、あなたの人生が否定されたような気持になるでしょうか。また社会から必要とされていないと感じることがあるでしょうか。
おそらくそんな気持ちにはならないのではないでしょうか。
水が売れなかったのはあなたの人生に価値がないわけでも、あなたが社会から必要とされていないからではありません。売り方が悪いのです。
売れない原因を考えてみましょう。
原因として考えられることとしては、
- 販売場所とターゲットが間違っている
水を売りたいのであれば水を求めている人のいる場所へ行くべきです。ランニングをしている人が多く集まる公園や外で農作業など体を動かしている人を探して販売すれば売れる可能性は高まります。 - 商品に対する効用(満足度)が低い
500mLの水が200円というのは他の市販の水と比べても高価です。この場合は価格を市販の水と同程度まで下げるか、塩分を追加して経口補水液として付加価値を高めることで売れる可能性が高くなります。また、販売商品を変更してコーヒーや新聞を売ることも考えられますが、今回は水しか売るものがないという前提条件を固定します。 - 販売力、交渉力が弱い
200円の水を「水を買いませんか」と15人に声を掛けたところで売れる可能性はかなり低いでしょう。まず、声を掛ける人数を増やす必要があります。この場合であれば最低でも100人には声を掛けたいところです。また「水を買いませんか」のみの声掛けでは売れる可能性は低いままでしょう。水の製品特徴を伝え、水を買うことのメリットを伝えるべきです。例えば取水地が鳥取の大山ならば大山の良さを伝えた後で、売り上げの一部が大山の環境保全のために利用されると伝えれば売れる可能性は高まるでしょう。また経口補水液なら脱水症状にある人を探して熱中症の予防率を示して直接的なメリットを示すことでさらに売れる可能性が高まるでしょう。
このように考えれば次の販売に向けて対策を講じることができます。
労働力商品も同じことです。そもそも労働力商品は多様なあなたの中のほんの一部分の能力をさらに細かく切りとって生成するものにすぎません。ですから労働力商品が売れないからと言ってあなたの全部が否定されることは決してありません。
労働力商品が売れない原因も水の例と同じように、
- 志望する業界、企業、職種が間違っている。
- 求められている価値を提供できる見込みがない。
- 自らの能力を適切に説明することができていない。
のいずれかに分類できます。
ただし、原因の2つ目の求められている価値を提供できる見込みがないという点については、労働力商品の特徴として使ってみるまでどれほどの使用価値があるか分からないという特性があるため大きな原因となることはありません。また日本企業はポテンシャル採用を行っている企業が大半ですので、この傾向はさらに高くなります。そのため、日本企業で不採用になる原因のほとんどが志望する業界、企業、職種が間違っているか自らの能力を適切に説明できていないかのいずれかとなります。
どのように対策するか
就活が労働力商品の契約交渉であるならば、対策することが可能です。
交渉の基本は「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」です。
就活における己を知ることとは、自己分析であり、彼を知ることとは業界分析、企業分析といったことや相手の立場に立って物事を考えることを指します。
ちなみに行う順番としては自己分析⇒職種分析⇒業界分析⇒企業分析をおススメします。
次回は、自己分析のやり方を説明します。
ではまた。