就活の技術#5 ーES、面接対策等ー

前回までで自己分析と企業研究の方法について説明しました。

これで「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」の状態になっていると思います。

本来ならば、自己分析と企業研究の2つを完璧に行うことができていれば就活で苦労することはありません。自分を素直に出して内定を獲得することができるでしょう。

また、就活のインターンシップやESの書き方、GD、面接対策などの情報は本やネットに山ほど溢れています。そのため、僕が説明するよりもそちらを見た方が100倍ためになると思います。ですので就活のマインドセット、自己分析、企業分析の説明をしたら僕の説明は以上です。

 

終わり。

 

と言いたいところですが、実際就活はそう簡単にはいかないのではないでしょうか。

特にガクチカと言われる「学生時代に力をいれたこと」という項目で多くの就活生が頭を抱えることだと思います。大学時代に、バイト、サークル、ゼミ、それ以外にボランティアなど特筆すべきことではなくても何かに力を入れていたならばESや面接で何か書くとはあるでしょう。そういった方は、就活対策本などをよんで正攻法で就活をしましょう。

 

しかし、ノンゼミバイサー(ゼミもバイトもサークルもやってない)かつ学問にも力を入れていないような学生はガクチカに書くことがありません。

 

大学でリア充(古いか、、、)だった人たちは「そんな学生本当にいるの?」となることでしょう。いや、非リアだった人たちも「そこまではないんじゃないか」となるかもしれません。

 

確かに僕の大学生時代はノンゼミバイサーはほとんど見かけることもなく、いても学生起業でバリバリ活躍していたり、長期インターンや旅にでていたりと特別な学生が多く、彼らは就活で強者に回ることの方が多かった気がします。

しかし、コロナ禍においては本当に何もないノンゼミバイサーがいるのではないかと思います。コロナのためリモート授業で大学には行かずサークルには入らず友達もできず、実家住みだとバイトをする必要もなく、惰性で単位は取ったもののゼミは面倒くさいので入らず、挙句の果てに空いた時間はYouTubeやインスタなどのSNSを見ていただけの学生が、、、。

そうなると就活で自己分析をしても出てくるエピソードがありません。そうなればESや面接で書くこと、話すこともありません。

 

僕はこういった学生はあまり就職に向いていないのかなと思います。なぜなら仕事というものは何よりもチームワークが求められるものだからです。どんなにリモートワークが進んでも人と関わることがない仕事はありません。そのため、ノンゼミバイサーの学生は、見方を変えれば一人で生きていく才能があるともいえるので、起業などして自分の思い通りに動いていった方が良いように思います(起業しても人間関係からは逃れられないということは一旦置いておきます)。しかし、起業しようにも資本金がなければ起業することはできません。資本金がなくても起業できる場合もありますが、そういった仕事は弁護士や会計士といった士業であることが多く、そうでない場合は基本的にレッドオーシャンです。

そのため起業するにも働いて資本金を貯める必要があります。そして働くために就職する必要があります。

 

僕は、これから自分がもしそういった学生だったらどう行動して就活を行っていくかを説明します。これは正攻法では難しいのが現実です。そのため、一般的な就活モラルに反することもしなければなりません。当然、批判もあるというのは分かったうえで説明します。

 

目次

 

就活のポイントのおさらい

前置きが長くなりましたが、ここからESや面接をどのように乗り越えていくのか説明します。ただ、僕は基本的にESにも面接にも共通することを説明していきます。特化した対策が知りたいという人は冒頭で述べた通り、書籍やネットで各自調べてください。

 

まずは、就活を始める前にこれまで説明した就活のポイントをもう一度おさらいしましょう。

就活のポイント

  1. 就活では自らの労働力商品を販売する。
  2. 企業は労働力商品を購入するお客様である。
  3. 明日からでも働きたい企業にエントリーする

他にも様々な細かいポイントがありましたが、選考を受けるにあたって必要となるポイントは以上の3点です。

 

そして、労働力商品を構成する要素の主たるものがガクチカとなります。

では、その労働力商品に求められているものは何でしょうか。

労働力商品に求められているものを知るためには企業が知りたいことや質問の意図を知る必要があります。

 

企業が知りたいこと

企業が知りたいことは一つだけです。「なぜ弊社に入社したいのか?」のみです。

 

ただ、「なぜ」という問いは3つの問いを複合して問うてしまう問いだと僕は考えているので、これからこの問いを分解していきます。

僕は「なぜ」という問いは、契機(原因)能力目的を同時に聞いてしまう問いだと考えています。

例えば、太郎くんと付き合っている花子ちゃんに「なぜ太郎くんと付き合っているの?」と問えば、その答えには3つの可能性があります。

1つ目は、「お姉ちゃんが紹介してくれたから」や「パンをくわえて走っていたらぶつかったから」といった契機(原因)。基本的にこれは過去のことが答えになります。

2つ目は、「彼の顔がかっこよくて優しいから」や「私の料理をおいしいと言ってくれて、私を必要としてくれているから」といった能力。基本的にこれは現在のことが答えになります。

3つ目は「彼がお金持ちで何でも買ってくれるから」や「そろそろ結婚したいと思っていたから」といった目的。基本的にはこれは未来のことが答えになります。

 

これと同じように「なぜ弊社に入社したいのか?」を問う時は、

  1. 「弊社に入社したいと思ったきっかけ」
  2. 「弊社に入社できると思った能力(何ができるか)」
  3. 「弊社に入社する目的(何がしたいか)」

の3つを同時に問うてしまうことになるので、企業は学生が何を問われているか分かるようにESや面接等で志望動機やガクチカを問います

つまり基本的には志望動機でエントリーした契機(原因)、目的、ガクチカで能力を問うているのです

ESや面接で志望動機やガクチカを問われたときは、何を問われているのかよく理解した上で答えるようにしましょう。

 

企業の質問の意図

先ほど、企業はエントリーした契機(原因)、能力、目的を問うと説明しましたが、企業がこの質問をする意図は何なのでしょうか。

 

その意図は主に

志望動機「契機(原因)、目的」
やめないかどうか(長く続けてくれるか)、第一志望かどうかを知りたい

ガクチカ「能力」
人柄(一緒に働きたいか)、ストレス耐性、職務適正はあるかを知りたい

となります。

具体的には、志望動機でこの企業を選んだ軸や価値観(契機、目的)を知り、それを自社のカルチャーと当てはめることによって、内定を出したら入社してくれそうか、長く勤めてくれそうかを判断しています。

またガクチカコミュ力等(能力)を知って、それを社内で活躍している社員に当てはめて、一緒に働きたい人物か、今後活躍してくれそうかを判断しています。

企業は志望動機やガクチカを通して主にこういったことを知りたいと思っています。ほかにも細かく分ければ積極性・自主性や成長性を問うような質問もありますが、そこに関しては後で説明します。

 

ともかく、ESや面接においては何を聞かれていて、その質問の意図は何かを考えて答えることが大切です。

 

ガクチカを作るしかない

ESや面接の質問の基本について説明したので、いよいよ実践に入っていきます。

僕がノンゼミバイサーだった場合、ガクチカを作りに行くしかないと考えます。

ノンゼミバイサーについて調べると、やっていたことを正直に、かつプラスに捉え「パチンコや競馬のデータを分析していたのでデータ分析力があります。」や「YouTube を長時間見て、何が大衆に受け入れられるのか分析していました。」といった説明をせよというような回答があります。

しかし、僕が面接官ならこうした学生はまず落とします。応募者が1人しかいないならいざ知らず、常識的に考えてほかに真面目な学生がいるならそちらを採用します。

というか、1人しかいないとしてもまず落とします。

その理由は2つあります。

まず、深堀に耐えることができません。

パチンコの例なら「学生の本分は学業だと思うのですが、そちらはどうですか?」と問います。そこで「勉強はしませんでした。」と返答されれば、「好きなことには全力で取り組めるのかもしれないけど、仕事だとやりたくないことも当然あるのでそのストレスに耐えられるか不安。」となります。また、もし「勉強に関しても分析をして良い成績を取りました。」という返答が返ってきたならば、「エピソードの選択が下手。そちらを説明すべき。自己分析ができていないのかな。」と、どちらを回答しても良い印象を持たれない可能性があります。

YouTubeの例だと、「YouTubeを分析した結果にはどのようなものがありますか?」と問います。そこで「YouTubeを分析した結果、サムネで一番盛り上がる箇所を知らせたり、音楽だとイントロを短くしたりとタイパになるような工夫が有効であると分かりました。」と返答するとします。すると「では、それをご自身の経験の中で活用された事例を教えてください。」と問います。そこで「私もYouTubeの動画を作成して、登録者数5万人を達成しました。この力は御社のマーケティングでも活用できると思います。」となれば十分評価できるガクチカとなります。しかし、大抵は「人と話すときは結論ファーストで話すようにしています。」といった「それはYouTubeを分析しなくても誰もがやること。ただYouTube見てただけですよね。」といった感想になってしまいます。

次に採用できない理由としては、これはどちらにも共通していることですが、これらのエピソードからは人との関係性のなかでどのように振舞うかが見えてこないため、採用できないとなります。

何度も言いますが、仕事はチームで行います。つまりどんな職業であっても会社のなかで働く限りチームワークが求められます。そのため、企業はチームの中であなたがどのように振舞うのかを1番に知りたいと考えています。特にチーム内でトラブルが発生したときや人間関係においてトラブルが発生したときにどのようにそれらの課題を乗り越えたか知りたいと思っています。それが所謂、コミュニケーション能力ともいえます。

また、体育会系と呼ばれる人たちが就活に強いのも常にチームの中で揉まれ、常にどのように振舞うかを考えてきた人たちだからです。

よって、よほど特筆した能力がない場合はチーム内でどのように振舞ったかを説明することになります。

 

よってノンゼミバイサーの方々は、今からガクチカを作りに行く必要があります。

しかし、現在大学3年生でノンゼミバイサーだと就活を開始する時期になっています。今からバイトを始めたり、サークルには入ったり、ゼミに入ったりできるならベストですが、なかなかそれも厳しい時期になっています。

そのため、就活を行いながらチームに関わるガクチカを作っていく必要があります。

では、何をすれば良いか。それはインターンに参加することです。長期インターンがベストですが、2day以上のインターンでビジコン型、課題解決型、新規事業立案などを行うインターンに参加しましょう

そしてその中で、チームで何かをする体験をしてそれをガクチカに落とし込みましょう。

盛るしかない

そしてここからですが、このインターンをビジコンに参加したこととしてESに落とし込みましょう。

ビジコンとはビジネスプランコンテストのことなので、ビジネスプランを提案して競い合えばビジネスプランコンテストということになります。

まぁ、かなりグレーゾーンですが、ノンゼミバイサーであればこのぐらい盛らないと就活で勝負することができません。

「就活で絶対に嘘をついてはいけない」「面接官は嘘を見抜く」と説明しているサイトは数多あります。しかし、大抵の場合、この「就活で絶対に嘘をついてはいけない」とか「面接官は嘘を見抜く」説明しているサイトを運営しているのは就活エージェントです。

就活エージェントは採用活動を行う企業からお金を得て経済活動を行っています。よって、就活エージェントのお客様は就活生である学生ではなく、採用活動を行う企業です。そのため、就活生である学生が嘘をついたり話を盛ったりすると本来ならば当然不採用の学生を採用してしまうことになり、採用活動を行う企業に損害が出ることになるのです。お客様に損害を出させるわけにはいかないので、就活エージェントは「絶対に嘘をついてはいけない」と言います。これは、当たり前のことです。

ただ、この当たり前ゆえに「就活で嘘をいってはいけない」と言いながら、「第一志望だけは嘘を言っていい」とか言っている就活エージェントも存在します。確かに最終面接やそれに近い選考において「御社は第2志望です。」といったらほぼ100%落ちます。よって、こうした矛盾する発言が出てくることになるのです。

ちなみに、当たり前ですが僕も嘘をついて入社してくるような人とは一緒に仕事をしたくありません。できる限り優秀で真面目な方と一緒に仕事をしたいと考えています。

(ただし、嘘というのはバレて初めて嘘となります。つまり、バレない嘘をつく方ならば僕はその方を優秀な方だとも思っています。)

しかし、そうはいっても小さな嘘は誰しもがついています。

まず第一に、就活生を経て社会人になった人たちの大半が嘘をついて入社しています。入社した後に、同期に「何のために働いているの?」と聞いてみてください。すると大半の人が「お金」と答えます。でも、就活時には「社会のために貢献したい。」とか「世の中をもっと便利にしたい。」と言っていたわけです。
僕は本当に「社会のために貢献したい。」と心の底から思って入社したので、今でもこの質問に対してそのように答えるのですが、気持ち悪がられます。結局社会人は大抵、嘘をついて入社しています。

 

では、就活ではどんな嘘でもついていいのか。

 

それは違います。嘘をつくといっても程度があります。例えば、一般社会だと品質検査をしていないのにしたといった虚偽や産地を偽装したといった嘘は場合によって逮捕されます。

これと同じで就活生も学歴や保有資格、犯罪歴などを偽ると「重要な経歴の詐称」にあたり、内定取消や、入社後の懲戒処分の対象となる場合があります*1

 

ということは、世の中には嘘をついてはいけないことと、嘘をついても方便となるところがあるということになります。

 

嘘をついてはいけない範囲

皆さんはジョハリの窓を知っていますか?

これから嘘をついてはいけない範囲を説明するためにジョハリの窓を活用します。

ジョハリの窓とは自己分析を行う時に用いるツールの一つですが、僕は嘘をつく時の情報の振り分けツールとして使用していました。もちろん使い方を間違えていることは百も承知です。

ジョハリの窓は、他人も自分も知っている「開放の窓」と他人は知っていて自分は知らない「盲目の窓」と他人は知らないが自分は知っている「秘密の窓」と他人も自分も知らない「未知の窓」に分かれます。

この中で、絶対に嘘をついてはいけない領域は「開放での窓」であり、一方で嘘が方便となるのは「秘密の窓」の」領域のみです。

これから一つずつ説明していきます。

1つ目は「開放の窓」です。ここには自分も他人も知ることができる情報が入ります。例えば学歴、成績、保有資格、検索したら出てくる犯罪歴等はすべて「開放の窓」に属します。証明書を求めることができる項目やネットで検索したら出てくる項目はすべて「開放の窓」に属します。この範囲では絶対に嘘をついてはいけません。バレた場合は致命的に信用が失われるだけでなく、場合によっては懲戒処分もあり得ます。

 

2つ目は「未知の窓」です。ここには自分も他人も知ることができない情報が入ります。例えば、未来全般の話がこれにあたります。10年後にどうなっていたいかなどの話は、自分の本音を語ろうが、嘘を語ろうがそれが真実になるかどうかは実証のしようがありません。よって、ここは嘘のつきようがない範囲となります。

 

3つ目は「盲目の窓」です。ここには他人は知っていて自分は知らない情報が入ります。例としては、仕事の内容に関することが当てはまります。就活生のよくつく嘘の中で一番バレやすいのがここに関する嘘です。

例えば雑貨を取り扱う小売業に対して、「私は高校生の頃、御社の店舗に行き、その売場に感動したのでお客様が感動できる売り場を提案したいと考え御社を志望しています。」と述べたとします。そして面接官から「弊社の売場に改善点があるとすればどういった点ですか?」と質問されたとします。そこで「御社の売場は商品数が多すぎると感じるので、商品数を少なくして見やすく買いやすい売り場にすべきだと考えます。」と真っ当に答えたとします。すると面接官から「実は弊社でも同様に考え、商品数を減らしたことがあるのですがそのことはご存知ですか?」と問われました。「知りませんでした、、、。」とは言えないので、「はい存じ上げております。」と就活生は答えました。すると追い打ちをかけるように「では、それは何年から何年のことで、その時の売上がどうだったか教えてください。」と言われました。この時点で、もうどうしようもありません。「すみません。存じ上げませんでした、、、、。」と答えるしかなく、嘘がバレます。

相手の領域で嘘をつくことはとても危険なことです。先ほどの例だと企業研究が足りていないことがバレるばかりか、就活の軸にまで疑いをもたれる結果となってしまいます。よって嘘をつくのは最後の領域である「秘密の窓」のみとするようにして下さい。

 

4つ目が「秘密の窓」です。ここは自分は知っているが他人は知らない情報が入ります。そして、ここでの嘘のみが方便となります。ここには、第一志望、その企業を志望したきっかけ、エピソードトーク等が入ります。例えば、ハウスメーカーのA社とB社にエントリーしている太郎君が、「A社が第一志望です。」と言っているときにそれが嘘かどうかはどう見抜けばよいでしょうか。また、太郎君が「A社を志望したきっかけは実家がA社の建築した家で、家族の礎たる「家」の販売に携わりたいと思ったからです。」という志望動機を話した時、その話が嘘かどうかはどう見抜けばよいでしょうか。さらに、太郎君が「私はバイト時代に回転寿司店で働いており、そこで113人を束ねるバイトリーダーをしていました。その結果、マネジメント能力が身に着きました。私はこのマネジメント能力をもってたくさんの人たちが関わるハウスメーカーのA社で働きたいと考えています。」という話をした時にそれが嘘であるかはどう見抜けばよいでしょうか。

 

そんなの簡単じゃん。深堀をすればよい。

 

そう答えられる方が多いでしょう。今回の場合、特にバイト時代の話などは「1店舗でバイトを113人も雇っているところなんてホントに存在するの?どうやって回すの?人件費だけでもバカにならないでしょう。大体、この人手不足と言われている時代にそもそもそんなに応募があるの?あまり社会人を舐めない方がいいよ。盛るならせいぜい18人とかにしなきゃ。」と面接官の立場なら言いたくもなるでしょう。

すると太郎君は「えっと、、、本当のことを言ってはいるのですが、、、すみません。」と予想だにしていない面接官の反応に戸惑い、角が立たないように「すみません」と言ってしまいました。

すると面接官は心の中で「やっぱり嘘じゃないか。嘘をつくのが下手な奴だ。」と思いました。

 

ところが、一見嘘に見える太郎君のこの話は本当は事実なのかもしれません。

回転寿司大手のスシローのホームページには以下のような記述があります。

 

Q.1店舗あたりのスタッフ人数を教えてください。

お店によって異なりますが、1店舗あたり約80名~120名程度のスタッフが働いています。社員は2~3名ですので、大半がアルバイト・パートスタッフです。スシローは、アルバイト・パートスタッフの皆様に支えられて営業しております。*2

 

つまり太郎君がスタッフ数について本当のことを述べていた可能性は十分あるのです。

しかし、面接官の常識に当てはめた圧迫気味の深堀が太郎君に噓つきのレッテルを張ってしまいました。

 

僕はこういった例が多々あるように感じます。人は真実を述べる時、その真実に疑いの目を持たれることを想定していないことが多いのです。そのため、ひとたび疑いの目を向けられれば途端に狼狽してしまいます。

逆に、嘘つきの方が深堀に耐える準備は入念に行っています。そもそも深堀をされることを前提として嘘をつきます。そのため「焼き肉店で50名を束ねるアルバイトリーダーとして活躍していました。」と話し、面接官から50名の部分に疑問を持たれたときには瞬時に「そうですね。確かに一般的な感覚からすると多いと感じるかもしれません。例えば西松屋さんなどは1店舗あたり2~3名で回るように店舗オペレーションを設計しています。そのため1店舗当たりのスタッフ数は約4名程度です。しかし、スシローさんは約120名のスタッフいる店舗もあり、業態によって店舗運営に必要となる人員は様々です。」とスラスラ反論が出てくることでしょう。
(ちなみに西松屋の1店舗当たりの人員は、有価証券報告書の従業員数(パート・アルバイト)数を店舗数で割って導出しました。)

 

今回の例では、太郎君にとって1店舗に113人のスタッフがいたことは事実であり、それが太郎君にとっての一般的な常識でした。そのため、1店舗のスタッフ数が他の業界の店舗に比べて多いのか少ないのかなど考えたことがありませんでした。

そのため、そこに疑いの目が向けられるとは思ってもみなかった太郎君は途端に狼狽してしまったのです。そしてそれが嘘つきの挙動として捉えられてしまったのでした。

 

この話から学べる教訓は、話が嘘かどうかは、実際にその話が嘘かホントかではなく、深堀に耐えられるかどうかが決めるということが分かります

今回の太郎君の落ち度は深掘りに対する対策を一切行っていなかったことです。

では、深堀に耐えるための対策はどのように行ったらよいのでしょうか。

 

深堀に耐える

話が嘘かどうかは、実際にその話が嘘かホントかではなく、深堀に耐えられるかどうかが決めることを先ほど説明しました。

では、どのようにして深堀に耐えるか。

深堀に耐えるために行うことは主に2つあります。

まず、行うことは何をどう深掘りされるのかを事前に知っておくことです。
そして相手が何を考えているかを知ることです。

 

では、どうやって相手の考えていることを知れば良いのでしょうか。

それは面接のやり方に関する書籍を読んでください。

 

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僕がおススメしたいのは、細井智彦さんの『本当に「使える人材」を見抜く採用面接』です。この本には、面接官の質問の種類、質問の意図、深堀の仕方、深堀に対するNG回答などが分かりやすく書かれています。このことは面接だけでなくESにも活かすことができます。

また、この本を読むことで面接官には面接官の悩みがあることが理解できて面接に対する緊張感が薄くなります。面接官も同じ人間であることが理解できるようになります。

ともかく、僕は常に相手の立場に立って物事を考えることが重要だと考えています。

企業に入社すれば、お客様の立場に立って考えることがとても重要です。採用面接の段階から相手の立場に立って物事を考える訓練を行いましょう。

 

次に、2段階目以降の深堀をされたときの回答はなるべく「秘密の窓」で行うということです。1段階目の深堀は、深堀の種類を知ることやここは質問して気安いであろう箇所(例えば具体的な数値に関することなどが挙げられます。「その数値を目標とした理由は?」「数値の検証方法は?」「その数値結果は今までの結果と比較して良い結果と言えるの?」などが挙げられます。)をあらかじめ考えておくことである程度までは対策ができます。しかし、2段階目以降の深堀に関しては企業によって面接官によってどこまで深堀するか異なるため対策が困難です。そこで2段階目以降の深堀に関しては「秘密の窓」の領域の情報で答えられるようにしましょう。

例えば、先ほどの例で西松屋とスシローの1店舗当たりの従業員数の話をしましたが、もしその後に面接官から「どうやって1店舗当たりの従業員数を知ったの?」と問われたら、正直に「ネットで調べました。」と答えるのではなく「2つの店舗でアルバイトをしている別々の友人たちから偶然聞きました。」と答えるようにしましょう。

もし「ネットで調べました。」と回答をすれば、それは真実かもしれませんがあきらかに準備をしてきた感が強く出ます。あくまで友人から偶然聞いたという設定にして自己の領域で完結させましょう。ただし、その後に面接官がしつこく「その友人の言っていることは信用して良いの?」と意地悪く深掘りされた場合は「それは私も考えて、ネットで確認しました。」と述べましょう。

ここで言いたいことは、できる限り「秘密の窓」で勝負することが肝心だということです。

以上が深堀に耐える対策です。

 

ただし、深堀に耐えるためには訓練が必要となることも多いため、友人や就職支援センター、誰もいなければ両親でもいいので模擬面接を受けるようにして下さい。

 

それでも耐えられなかったときの対策

先ほど、深堀に対する対策を説明しました。しかし、どれだけ対策をしても答えられないときはあります。例えば、予想していなかった箇所を深掘りされたり、面接官から反論されたりした場合です。

 

特に面接官から質問ではなく反論された場合は、その反論を受けるしかありません。

 

その時、キーワードとなるのが「謙虚」と「素直」です。

誤って「盲目の窓」の領域へ立ち入ってしまった場合や、勝負をかけて「盲目の窓」の領域の話をした場合(例えば最終面接で役員の実績を調べ、それについて語った場合)に面接官から「間違っている」と反論される場合があります。

その時は言い訳をすることなく、謙虚かつ素直に「勉強不足で申し訳ございませんでした。これからさらに勉強してまいります。」や「私の誤りに気付くことができました。ご教授いただきありがとうございます。」と述べましょう。

また、予想外のところを深掘りされて答えられない時も「すみません。現在はお答えすることができません。申し訳ございません。」と答えましょう。ただし、これは最終手段です。この回答をすれば、この面接は乗り切れるかもしれませんが、次回の面接で必ず同様の質問がなされると心得ておきましょう。このようなことにならないためにも、どんな質問が来ても耐えられるように対策をしましょう。

 

最後に、面接官は時に深堀をしつこく行ったり、意地悪な質問をおこなったりすることがあります。その大半が、就活生が謙虚に見えないときに行われていると思います。

反対に自信がなさそうに見えたり、何を言っているか分からない時にも面接官は深掘りを行いますが、意地の悪い質問をすることはありません。純粋な質問として聞いています。

面接で意地の悪い質問を何度かされている場合は、自分が謙虚かどうか振り返ってみましょう。

謙虚になる方法としては、自己のアピールよりも相手の面接官と良好な関係を築くことにフォーカスすると自然と謙虚になれます。例えば、自分の実績を意気揚々と自慢げに語ることは自己アピールとしては良いですが、面接の場ではあくまでも対話の場として実績をひけらかすことなく納得してもらえるように伝えることにフォーカスすべきです。これを心がけていれば、謙虚になれます。

 

何度も言いますが、就活は労働力商品の売買契約を結ぶ交渉の場です。お客様(企業)は商品の内訳や効能に疑問があれば当然質問をしてきます。また、就活生はセールスマンとして、お客様には謙虚にそして誠実に対応しなければなりません。

契約交渉はWin-Winでなければ意味がありません。どちらかがWin-Loseになってはいけないのです。よって交渉であればいつでもNo-Deal(取引しない、交渉決裂)を覚悟すべきです。こちらが相手の対応に不満を持ちNo-Dealを決断することもありますし、相手がNo-Dealを決断することもあります。

私の就活法はすべてこの原理原則にもとづいて考えています。

このことは就活中、いや働き始めてからも忘れてはいけません。

 

これを読んでいる皆様の就活がより良いものとなり、就職後も活躍されることを心の底から願っています。

 

では。

 

 

 

*1:

労働問題.com, 「経歴詐称でいかなる懲戒処分ができるか?」,
https://www.roudoumondai.com/qa/discipline/job-fraud.html,(2023年6月30日)

*2:スシロー, 「スシローのバイトQ&A (仕事)」,
https://akindo-sushiro-job.net/info/faq/faq13.html,(2023年6月30日)