就活の技術#4 ー企業研究の方法ー
前回は自己分析の方法を説明しました。
今回は彼を知ること。つまり企業研究について説明します。
目次
業界について知る
企業研究においてまず行うことは、業界研究です。
前回の自己分析において第一志望の業界や職種は定まっているはずなので、それを基に業界研究を行います。職種のみが定まっている場合は、職種が活かせる業界を探していきます。
業界研究の第一歩は『業界地図』に目を通すことです。
業界地図は東洋経済新報社から発売されているものと、日本経済新聞社から発売されているものが有名です。どちらを選んでも内容に大差はないので、どちらを選んでも問題ありません。個人的には業界何位なのかがわかりやすかったので、東洋経済新報社の『「会社四季報」業界地図』を使用していました。
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業界地図を使用して行うことは、自己分析とマッチする業界を第5志望業界まで導き出すことです。価値観や能力がマッチしそうな業界を5業界ほどピックアップしてください。
えっ!
自己分析でゆるぎない第一志望業界を見つけたからそこだけ見たらいいんじゃないの?
気持ちは分かります。しかし、この後説明するエントリー企業数の目安のためにも5業界ぐらいが平均して必要になると考えています。
エントリー企業数の目安
どんなに第1志望であったとしても、落ちる時は落ちます。こちらがどれだけ熱い思いで自らの労働力商品を営業したとしてもお客様である企業が「買う」と言わなければ、労働契約は成立しません。
そのため、僕たちはリスクヘッジをしなければなりません。つまり複数企業にエントリーすることになります。では、どれくらいの数の企業にエントリーすればよいか。それは自己の通過率を設定し、採用までのフェーズ数を設定することによって導出できます。例えば、各フェーズの通過率を1/2だとしましょう。そしてフェーズをES選考、GD、1次面接、2次面接、最終面接の5フェーズだとします。すると、逆算して考えると最終選考で2社うけて1社内定が出ることになります。また最終選考へ行くためには4社必要だということになり、これを繰り返すとES選考を通過するために32社エントリーすることになります。
僕はこれが自己分析をしっかり行った人がエントリーする妥当なエントリー数だと考えています。
逆に全く自己分析をしていないなら、通過率を1/3に絞ってエントリー数を手あたり次第に243社ほど提出してみてください。
僕の知り合いに243社とは言わないまでも150社手あたり次第にエントリーした強者がいます。その方の大学は世間的に見て有名とは言えない大学でしたが、その方は最終的に国立の研究法人に総合職として就職していきました。その大学からその法人へ就職したのはその方が初めてだそうです。
その方いわく、150社も受けるとSPIで見たことない問題はなくなるそうです。
僕はこの方の経験から、就活には大学は関係ないということ。そして、圧倒的な行動力はすべてを凌駕することを学びました。
ただ、これだけの企業にエントリーしてそのすべてを受けるというのはそれ自体が才能なので真似することはあまりお勧めしません。
よって、自己分析をしてそこから業界を絞り32社程度エントリーするのが最適だと考えます。
そして32社ほどエントリーしようとすれば、1業界のみで32社ほどエントリーするのは厳しいと思います。大企業と中小企業をあわせても32社を1業界の中から探すのは難しいと思いますので、自らのやりたいことや得意なことに関連する2~5業界も見て32社ほどエントリー企業を決めてください。
ここでエントリー数に関する注意点があります。まず、32社というのは3月1日の就活解禁日に内定を1社も持っていない学生の目安です。例えば、早期選考を経て第一志望ではない業界から内定を持っているならば、第一志望のみに絞って就活を行ってください。
次にエントリー数はフェーズごとに異なります。例えば、就活の選考期間は企業によって異なるため、6社エントリーして2次選考に4社残ったとします。その場合は、追加でエントリーする必要はありません。逆に32社エントリーしても1次選考で3社しか残らなかったとしたら、エントリー企業を追加する必要があります。このようにフェーズごとでエントリー数を決めてください。
大企業は同じ時期に選考を行う場合が多いためエントリー時期を逃すとエントリーすることができません。そうしたことが起きないようにするためにも32社というエントリー数を一つの目安として目指してみてください。
ここまででエントリー数の目安と注意点を説明してきましたが、エントリー企業を決めるのにはコツがあります。
エントリー企業を決めるコツですが好きなことよりも得意なことを優先して業界選びや企業選びを進めてください。
例えば、料理が大好きで昔から文章を書くことが得意であるならば、第一志望は料理雑誌を出版している出版社ということになるかと思います。しかし、こうしたジャンルを行っている企業は多くないので、他業界もエントリーしていかなければなりません。その時、料理が大好きだから飲食業界の企業にエントリーするよりも前に、書くことが求められる業界、ライターとして活躍できる業界(新聞業界等)の企業をエントリーしてください。
というのも好きなこととというのは年齢によって移り変わっていくものです。しかし、得意なことというのは年齢によってあまり変化しません。また、得意なことを続けていくと嫌いであったことも好きになることがあります。僕の場合、もともと実家が飲食店だったこともあり幼少期から接客をしていたので接客は得意でしたが好きではありませんでした。しかし、小売業に入社して接客をすると接客で上司から褒められることが何度かありました。するとあれだけ好きではなかった接客が自分の中で好きになっていくということがありました。ということで、得意なことを中心にしてエントリー企業を選んでください。
企業について知る
業界を決めてエントリーする企業を決めたら次はいよいよ企業研究です。
まずは企業の採用ホームページを見てビジネスモデルを理解しましょう。
ビジネスモデルというのはその会社が何で利益を上げているかということです。
次にエントリー企業が上場企業であるならば、EDINETを使って有価証券報告書を見てみましょう。有価証券報告書の【従業員の状況】には平均勤続年数や年間平均給与が書かれています。
また、【事業の状況】には理念やビジョン、事業リスク等が書かれています。
また、余裕があれば、損益計算書には売上原価や販売費及び一般管理費(営業の人件費や広告費等)や営業利益、純利益が載っているので、競合他社と比較するのが良いです。ここから企業が何にどれだけお金を使っていて、どれだけの利益があるのかわかります。
さらに余裕があれば貸借対照表も見てその企業の財務状況を見ていくこともできますが、ここは説明しだすときりがないので割愛します。
ただ一つ財務状況に関する注意点としては、四季報などで「疑義注記」や「重要事象」がついている、または証券会社が公表している継続企業注記銘柄に載っている企業は避けることが無難です。また有価証券報告書でも【注記事項】の中で(継続企業の前提に関する事項)という形で経営継続の不透明さが書かれている場合があるので確認しておきましょう。
ホームページやEDINETで企業のことを知ったら、次は『就職四季報』で企業のことを知りましょう。『就職四季報』には選考フローや採用実績校、さらには初任給やボーナスまで記載されている場合が多いので第一志望業界や第一志望企業について調べましょう。
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企業の全体について知ることができたら、次は企業のネガティブチェックを行いましょう。
企業の口コミサイト(例えばOpenWork)などで、退職理由を見てみましょう。
退職理由の多くが「今後の自分への成長が見込めない」「この企業でしか活きない能力しか身に着かない」みたいな理由が多い場合は特に問題のない良い企業が多いです。
一方で「残業が多い」「賃金が低い」「転勤が多い」などが多く共通してみられる問題の場合は、その問題が自分にも降りかかる可能性があります。
入社後にその問題が自らに降りかかったときに耐えられるかどうかよく考えましょう。
ただ、残業が多いとか上司が厳しいとかは配属先によっても異なる場合があるので、すべてを鵜呑みにするのは危険です。あくまで多く共通している問題かどうかを考えましょう。
職種について知る
業界、企業の研究が終わったら、最後は職種の研究をしましょう。
職種の研究のために企業の採用ホームページを見てみましょう。
すると、職種紹介や先輩紹介といった人物にフォーカスを当てたページがあるかと思います。次にインタビューであるならば、その中で述べられている「やりがいを感じたこと」「仕事で大変なこと」をピックアップしましょう。また、1日や1週間のスケジュールが載っているならば、共通して行われている事象を取り出しましょう。
そして取り出したならば、そこからどのような困難やトラブルがあるかを考えましょう。
例えば、とある企業のとある営業職のインタビュー記事の「やりがいについて」の項目に専門家との意見交流や関連企業との調整によって新たな分野を開拓したこととあれば、「専門家との意見交流を行うために専門的な知識を身に着ける必要があっただろうなぁ」とか「関連企業との調整のためには相手の利益も考えたうえで分かりやすく話す必要があっただろうなぁ」などと大変だったであろうことがいくつか出てきます。
また、1週間のスケジュールの中で納期の打ち合わせや進捗状況の管理などが多数あれば、こうした能力がこの企業のこの職種には求められているのだということが分かります。
このように一つのページから、その職種であれば発生するであろう困難やトラブル、大変であろうこと、工夫しなければならなそうなことをなるべくたくさん見つけてください。最終的にこの困難さや大変さに似たエピソードを自らのエピソードの中から見つけ出しガクチカとして生成していくことになります。
以上が企業研究のやり方です。これで彼を知り、己を知ることができました。
後は本番に向かうだけです。
次回はいよいよES、面接の実践編です。
ではまた。